子どもと山を歩いていると、こんな場面がありませんか。
- 急な雨で子どもの服が濡れ、休憩に入ったとたんに「寒い」と言い出す
- 持ち物リストを見て買ったエマージェンシーシートを、封も開けずにザックへ入れっぱなしにしている
- 400円のものと2,000円のものが並んでいて、どちらを買えばいいのか分からない
山では、汗をかいたまま止まるだけで体温が奪われます。体温調節の力がまだ育っていない子どもは、大人より先に震え出します。
この記事に出てくる重さ・サイズ・価格は、各メーカーの公式サイトで確認した数値です。使い方は登山専門メディアと山岳雑誌のビバーク解説で裏を取りました。
エマージェンシーシートの使い方を「巻く・敷く・かぶる」の3つに整理し、子連れで使うときの注意点と、選ぶときの4つの基準をまとめます。
読み終えるころには、封を開けたことがないシートを自信を持って使えるようになり、家族分をどれで揃えるかまで決まります。
エマージェンシーシートは体から出る熱を跳ね返して冷えを止める道具

エマージェンシーシートは、ポリエステルにアルミニウムを蒸着したフィルムでできた薄いシートです。サバイバルシート、レスキューシート、アルミブランケットなど、売り場によって呼び名が変わりますが中身は同じものを指します。
見た目はアルミホイルのようですが、手に取ると固くはありません。どちらかというとビニール袋に近い質感です。
仕組みはシンプルで、体から放射される熱を反射して外へ逃がさないというもの。モンベルの製品説明でも、体から放射される熱を反射し、体温の低下を緩和させる防寒シートと説明されています。シート自体が発熱するわけではないので、体をくるんで初めて効き目が出ます。
フィルム状なので風を通さず、水も通しません。つまり1枚で保温・防風・防水の3役をこなす道具。山で体温が下がる原因は、冷え・風・濡れの3つですから、そこにまとめて手を打てることになります。
価格は400円から2,000円くらいのレンジで、100円ショップでも手に入ります。ただし安価なものは使い捨てと考えるのが前提で、繰り返しの使用を想定しているのは高い製品のほうです。数百円のものを家族分そろえて、使ったら入れ替える、という持ち方が現実的です。
救急セットの中身として何をそろえるかは、子連れ登山の救急セット|基本の中身7つとおすすめ2選・使い方のコツにまとめています。
ツェルトとの違いは「屋根があるかどうか」
似た道具にツェルトがあります。ツェルトはナイロンやポリエステルの大きな一枚布で、ストックやロープを使って簡易なテントのように張れる道具です。大きなものだと2〜3人が中で過ごせる広さ。
いっぽうエマージェンシーシートは極薄のアルミ蒸着シートで、体に巻きつけて使います。1枚のシートですが、これがあるだけでも雨風をしのいで保温できます。
違いは、屋根を張れるかどうかです。張って中に入れるのがツェルト、体に貼りつけるのがシート。日帰りの子連れ登山でまず1枚持つなら、軽くて場所を取らないシートから始めるのが無理がありません。
使い方は「巻く・敷く・かぶる」の3つ

エマージェンシーシートの使い方は、くるまる・かぶる・敷くの3通りに整理できます。緊急時だけの道具に見えますが、風の当たる稜線で休憩するときや、雨で体が冷えたときにも同じ使い方がそのまま役立ちます。
薄いアルミの1枚で本当に効くのか、と思うかもしれません。シート自体が熱を出すわけではないので、体に密着させて隙間をなくす、地面との間に1枚はさむ、という使い方をして初めて差が出ます。
1. 巻く|体に密着させて端を閉じる
いちばん基本の使い方です。ポイントは、シートを体に密着させること。そして端をしっかり閉じて隙間をつくらないことです。ふんわりかけただけでは、温まった空気が隙間から抜けていきます。
巻く前に、持っている衣類はすべて着込みます。防寒着、レインウェア、替えのアンダーウェア。頭・首・手といった末端も保温の対象です。着込んだうえから、シートで外側を包むという順番になります。
注意したいのが結露です。シートの内側には水滴がつきます。肌に直接触れさせず、必ず洋服の上から巻き付けてください。濡れた服のまま巻くと、結露と重なって逆に冷えます。
2. 敷く|地面からの冷えはザックとシートで止める
座って休むとき、体温は地面にも吸われます。冷たい岩や濡れた土に直接座ると、上半身をいくら包んでも下から冷え続けます。
地面からの冷気を防ぐには、まずザックを敷きます。そのうえでシートを使うと、地面との間に空気の層ができます。テント泊のときにテント内の地面へ敷けば、中の温度を保つ助けにもなります。
場所選びも冷えに直結します。岩陰や樹林帯など風雨をしのげる場所を見つけたら、石や枝をどけて座る場所を平らにしてから座ります。休憩のたびに敷くなら、座ることに向いた厚みの道具を1枚持っておくと手早く座れます。候補は登山用座布団おすすめ5選|子連れの休憩でお尻の冷えと痛みを防ぐ選び方で紹介しています。
3. かぶる|雨と風をしのぐ屋根にする
急な雨で、子どものレインウェアが間に合わないときがあります。フィルム状のシートは風も水も通さないので、頭からかぶれば雨具の代わりになります。
風の強い場所では、かぶるだけでも体感がはっきり変わります。雨風をしのいで保温できるという意味では、1枚でツェルトの役割の一部を肩代わりしていることになります。
使う前に大事なのが、出しておくタイミングです。シートやホイッスルのような小物は、暗くなる前にザックから取り出しておきます。予定通りに下山できないと分かったら、遅くとも日没の30分前には引き返すか、その場で夜を明かすかを決めます。暗いなかを歩き回るのは体力を消耗し、転倒・滑落を招きます。
雷や雹で動けなくなったときの手順は、登山で雷・雹(ひょう)が来たら?子連れのための緊急対応マニュアルで解説しています。
子どもに使うときは音・結露・大きさの3点に気をつける

子どもは体温調節の機能がまだ発達途上で、暑さにも寒さにも弱いものです。だから休憩時には何か羽織るのが基本になります。エマージェンシーシートは、その「羽織るもの」を荷物を増やさずに用意できる手段でもあります。
特に夏が要注意です。気温が高いと汗をかきやすく、行動中に大量の汗をかいたまま休憩で止まると、風で一気に体温が奪われます。低山であっても、濡れて体が冷えることは非常に危険です。
そのうえで、子どもに使うときは次の3点を押さえておくと失敗しません。
- 音:シートはカサカサと音が出ます。音を嫌がって剥がしてしまう子には、静音タイプを選びます
- 結露:内側に水滴がつくので、肌に直接触れさせません。汗や雨で濡れた服は着替えさせてから、洋服の上に巻きます
- 大きさ:一般的なシートは210×130cm前後で、子ども1人には余ります。余った分は体の下に敷き込むか、親子で1枚に入る大きいサイズを選びます
使う順番も決めておくと迷いません。まず濡れた服を着替えさせ、着られるものを全部着せて、そのうえからシートで包む。そして温かい飲み物やカロリーの高い食べ物で内側から温めます。水分補給も欠かせません。外から包むだけでは、体の中に熱を生む材料が足りないからです。
年齢別に何を持たせるかは、子連れ登山の持ち物リスト完全版【年齢別チェックリスト付き】で整理しています。
選ぶ基準は重さ・静かさ・大きさ・繰り返し使えるかの4点

売り場には似た見た目の袋がずらりと並びます。見るところを4つに絞ると、選ぶのが早くなります。
- 重さ:軽いもので50gです。この重さなら、使わない日が続いてもザックから抜こうと思いません
- 静かさ:素材によってガサガサとした音が出ます。子どもと使うなら静音をうたっているものを選びます
- 大きさとたたみやすさ:厚みがあるものは、開いたあとにたたみ直すのが容易です。薄いものほど広げたら元に戻せないと考えておきます
- 繰り返し使えるか:安価なものは使い捨て、価格が上がるほど繰り返しの使用が想定されています。引き裂き強度も価格の差に出ます
色にも意味があります。銀色は熱を反射する色、金色は熱を集める性質の色です。体温を逃がさない目的なら銀色、日差しの下で見つけてもらう目印を兼ねたいなら金色、という選び分けになります。
外側がオレンジ色の製品もあります。オレンジ面を外にして包まると、助けを呼んだときに見つけてもらいやすくなります。樹林帯で動けなくなる場面を考えると、この差は小さくありません。
道具を増やすと荷物が重くなる、と感じるかもしれません。これから挙げる4つは、いちばん軽いもので50g、いちばん重いものでも約91gです。この範囲であれば、人数分を入れても荷物の重さはほとんど変わりません。
動けなくなったあとに居場所を知らせる道具もあわせて持つなら、子連れ登山の迷子対策グッズ5選|ホイッスルと防犯ブザーの選び方と使い方を参考にしてください。
この4点で選んだのが、次の4つです。気になるものから読み進めてください。
- モンベル エマージェンシーシート|50gで音が静か
- SOL エマージェンシーブランケット 1人用|体熱の90%を反射
- SOL エマージェンシーブランケット XL|親子2人で1枚に入る
- Eco Ride World エマージェンシーシート 静音|家族分をそろえやすい
モンベル エマージェンシーシートは50gで音が静か

最初の1枚として選びやすいのが、モンベルのエマージェンシーシートです。素材はアルミニウム蒸着ポリエステルフイルム、重さは50g。広げると213×132cm、たたむと6×8.4×3.5cmになります。
この製品の持ち味は、ガサガサした音がしにくいことです。音を嫌がる子どもにかけるとき、この差がそのまま「巻いていられるかどうか」に効いてきます。専用のタイベックス製スタッフバッグが付くので、ザックの雨蓋に入れっぱなしにしても角が傷みません。
価格は594円(税込)。数百円という値段に頼りなさを感じるかもしれませんが、広げたときの大きさは213×132cmで、990円のSOL 1人用(142×213cm)とほぼ同じです。差が出るのは、繰り返し使えるかどうかのほうです。まず自分と子どものぶんを1枚ずつ、と考えたときに迷いにくい選択肢になります。
なお、モンベル製品はAmazonでは扱いがありません。楽天市場かYahoo!ショッピングで探してください。

mont-bell(モンベル)
エマージェンシーシート
アルミニウム蒸着ポリエステルフイルム製で50g。展開213×132cm、収納6×8.4×3.5cm。ガサガサした音がしにくく、専用のタイベックススタッフバッグ付き。594円(税込)。
SOL エマージェンシーブランケット 1人用は体熱の90%を反射して繰り返し使える

保温力をはっきり数字で示しているのが、SOLのエマージェンシーブランケットです。素材はポリエチレンに高純度アルミをコーティングしたもので、体が放射する体熱の90%を反射します。サイズは約142×213cm、重さは約65g、たたむと約9×13.5×2cmです。
使い捨て前提のシートとの違いは生地にあります。引き裂き強度が強くて破けにくく、しなやかなので繰り返し使えます。傷が付いた場合も補修できます。一度広げたら終わり、ではないので、寒い日の休憩用に何度か使ってみて、巻き方に慣れておくことができます。公式でも、簡単に広げられて音も静かだと説明されています。
もうひとつ子連れで効いてくるのが外側の色です。外側はオレンジで、要救助者を見つけやすい色になっています。樹林帯で動けなくなったとき、銀色一色よりも上空や離れた場所から目に留まります。
価格は990円(税込)。使い捨てのシートより高いぶん、子どもに一度持たせて広げさせておける1枚です。本番で初めて触るより、事前に触っておいたほうが確実に使えます。

SOL(ソル)
エマージェンシーブランケット 1人用
ポリエチレンに高純度アルミコーティング。体熱の90%を反射し、約142×213cm・約65g。引き裂き強度が強く繰り返し使えて、広げるときの音も静か。外側はオレンジで見つけてもらいやすい色。990円(税込)。
SOL エマージェンシーブランケット XL は親子2人で1枚に入れる

小さい子どもに1枚ずつ持たせても、うまく巻けないことがあります。そんなときに現実的なのが、大きいサイズを親子で共有する方法です。
SOLのエマージェンシーブランケット XL は約147×249cmで、1人用より大きい2人用サイズです。重さは約91g、たたむと約9×13.5×3cm。アルミ面が体熱の90%を反射する点、外側がオレンジ色である点は1人用と同じです。
親が子どもを抱えるように座り、2人まとめて包む。こうすると、子どもの体温だけでなく大人の体温もシートの内側にとどまります。端を閉じて隙間をつくらないという基本も、子どもひとりに任せるより大人の手で確実にできます。
ポリエチレン素材でしなやかなため繰り返し使え、ガサガサ感がなく簡単に折りたたみ直せます。一度練習で広げても、また同じ大きさに戻せるということです。価格は1,540円(税込)。小さい子と歩く家族には、1人用を2枚買うよりこちらが合います。

SOL(ソル)
エマージェンシーブランケット XL(2人用)
約147×249cmの2人用サイズ、約91g。アルミ面が体熱の90%を反射し、外側はオレンジ。しなやかで繰り返し使え、ガサガサ感がなく折りたたみ直せます。1,540円(税込)。
Eco Ride World エマージェンシーシート 静音は家族分をそろえやすい

家族4人ぶんとなると、価格も気になります。Eco Ride Worldのアルミシートは、1枚から複数枚セットまで選べる静音タイプです。サイズは130×210cm、重さは1枚あたり80g。3枚セットの場合、1枚あたり約10.5×8cmにたたまれた状態で届きます。
名前のとおりカサカサ音が少ないのが売りで、パッケージでは同社の従来品より厚みを約3倍にしたと表示されています。厚みがあるぶん破れにくく、たたみ直しもしやすくなります。パッケージの表示では、体温を最大90%まで保持し、防水と防風にも対応するとされています。
安いものをまとめ買いして大丈夫か、と迷うかもしれません。エマージェンシーシートはもともと緊急時用で、安いものほど使い捨て寄りになるので、家族分を配っておいて一度使ったら入れ替える、という持ち方が向いています。
1枚が手のひらに収まる大きさにたためるので、家族それぞれのザックに1枚ずつ分けて入れておけます。家族全員ぶんをまとめてそろえたい人に向く1枚です。

Eco Ride World
アルミシート エマージェンシーシート 静音
130×210cm、1枚あたり80gの静音タイプ。パッケージ表示では、従来品より厚みが約3倍で、体温を最大90%保持し、防水・防風に対応。3枚セットなら1枚が約10.5×8cmにたためます。家族分をまとめてそろえたいときに。
まとめ|巻く・敷く・かぶるの3つを覚えておけば冷えは止まる
エマージェンシーシートは、封を開けずに持ち歩いているだけでは働きません。使い方を3つ覚えておくだけで、いざというときの動きが変わります。
- 巻く:着られるものを全部着せてから、体に密着させて端を閉じる。肌には直接触れさせない
- 敷く:ザックを敷き、風雨をしのげる場所を選んで、地面からの冷えを止める
- かぶる:風も水も通さないので、急な雨のときは雨具の代わりになる
- 選び方:重さ50g前後・静かさ・大きさ・繰り返し使えるかの4点で選ぶ
- 子ども:音を嫌がるなら静音タイプ、濡れた服は着替えさせてから、小さい子は親子で1枚に入る
外から包んだら、温かい飲み物とカロリーのある行動食で内側からも温める。この順番まで頭に入れておけば、数百円のシート1枚が家族を守る備えになります。
本文写真:モンベルのエマージェンシーシート(モンベル公式サイト)、SOLのエマージェンシーブランケット1人用のパッケージ(スター商事公式サイト)、SOLのエマージェンシーブランケットXLを広げたところ(スター商事公式サイト)、Eco Ride Worldの静音サバイバルシートのパッケージと収納袋(Amazon)


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