山を歩いていると、子どもが足を止めて虫に夢中になる場面がよくあります。そんなとき、こんなふうに感じたことはないでしょうか。
- 「これなに?」と聞かれても、虫の名前がわからず答えてあげられない
- どの虫なら触っていいのか、危ない虫はどれか自信がない
- せっかくの自然体験だから、安全に楽しませてあげたい
山は里より涼しく緑が深いぶん、街では出会えない虫がたくさんいます。ただ、なかには触ると危険な虫もいて、見分けが必要です。
この記事では、環境省や森林環境の情報、登山ガイドの解説をもとに、山で会える夏の虫と、触ってはいけない虫、安全な触れ合い方をまとめました。読み終えるころには、子どもの「これなに?」に答えられて、危ない虫も避けながら、山の虫観察を安心して楽しめるようになります。
山の夏は、里で会えない虫に出会えるチャンス
山の虫観察がおもしろいのは、里では会えない虫に出会えるからです。標高が上がると気温が下がり、生えている木の種類も変わります。そのぶん、そこに住む虫も里とは違ってきます。
ふもとに近い里山ではアブラゼミやカブトムシ、標高が上がるとブナの林でくらすセミなど、同じ夏でも会える顔ぶれが変わります。名前や住んでいる場所を少し知っておくだけで、ただの登山が宝探しのように変わります。
山で出会えるのは虫だけではありません。動物との出会い方は【山で子ども博士】山で出会える動物たち編 子連れ登山で知っておきたい生息地と注意点でまとめています。虫が苦手な子でも、遠くから見るだけ・鳴き声を聞くだけで十分に楽しめるので、無理に触らせる必要はありません。
セミは鳴き声と抜け殻で種類がわかる

セミは、姿を見つける前に鳴き声で種類がわかります。市街地からふもとの低山でよく見られるのは、アブラゼミ・ミンミンゼミ・ヒグラシ・ツクツクボウシ・ニイニイゼミの5種類です。
鳴き声には特徴があります。アブラゼミは「ジリジリ」と午後に、ミンミンゼミは「ミーンミンミン」と日中に、ヒグラシは「カナカナ」と朝や夕方に鳴きます。ヒグラシはスギやヒノキの林、ツクツクボウシは山地を好み、標高が上がるとブナ林でくらすセミにも会えます。
子どもと楽しむなら、抜け殻探しがおすすめです。木の幹や葉の裏についた抜け殻を集めると、その森にどんなセミがいるのかがわかります。夏のはじめと終わりで集めた抜け殻を比べれば、そのまま自由研究にもなります。セミ捕りが難しくても、抜け殻集めなら小さな子でも安全に楽しめます。
カブトムシ・クワガタは樹液の出る木と早朝・夜に会える

子どもに人気のカブトムシやクワガタは、会える場所と時間にコツがあります。ねらい目は、クヌギやコナラの樹液が出ている木です。樹皮が縦に深く割れていて、葉のふちがギザギザ、根元にどんぐりが落ちていれば、その木の可能性が高いです。
会いやすいのは早朝や夜です。昼のうちに樹液の出ている木を下見しておき、夜か早朝にもう一度見に行くと出会えることが多くなります。時期は7月中旬から8月上旬がねらい目です。
気をつけたいのは、昼間の樹液にはスズメバチも集まることです。木に近づくときは、まず周りにハチが飛んでいないかを確認しましょう。夜の採集が難しい家庭でも、早朝の下見なら日帰り登山のついでにできます。
チョウ・トンボ・バッタは歩きながら観察できる

探しに行かなくても、登山道を歩くだけで会える虫もいます。チョウ・トンボ・バッタは、道ばたや草地でよく見かける身近な虫です。
チョウは花のまわりに集まります。どんな花にどのチョウが来るのかを見比べると、花の観察もいっしょに楽しめます。山で見つけたい花は【山で子ども博士】花編 山で見つけたい花10選と大切にしたいことで紹介しています。日当たりのよい草地では、赤とんぼ(アキアカネ)やバッタも見つけやすい虫です。
うまく捕まえられなくても、がっかりする必要はありません。チョウやトンボは同じ場所に何度も戻ってくることが多く、観察のチャンスは一度きりではないからです。
触ってはいけない虫|スズメバチ・毛虫・アブ・マダニ

楽しい虫ばかりではなく、触ると危険な虫もいます。代表は、スズメバチ・毛虫・アブやブヨ・マダニです。見つけても近づかない、触らないことを、山に入る前に子どもと約束しておきましょう。
スズメバチは、「カチカチ」とあごを鳴らしはじめたら最後の警告のサインです。攻撃的になるのは8月から10月ごろで、オオスズメバチは土の中に巣を作るため、気づかず近づいて刺される事故が多くなります。出会っても手で払わず、姿勢を低くして静かにその場を離れましょう。黒っぽい服や強い香りは避けるのがコツです。
毛虫のなかでもチャドクガは、幼虫・成虫・卵のどれにも毒針毛があり、その毛は風で飛んで、直接触れていなくても被害を受けることがあります。「チャドクガ注意」の看板やロープで囲まれた場所には入らないようにします。もし触れてしまったら、こすらずにガムテープで毛を取り、水で洗い流します。
アブ・ブヨは沢や川の近くで早朝や夕方に活発になり、刺されると強い痛みやかゆみが出ます。マダニは刺されても痛みがなく気づきにくいのが特徴で、無理に自分で取ると口が皮膚に残ることがあるため、病院で取ってもらいます。刺されたときの手当ては子連れ登山の虫刺され対策|マダニ・ブヨ・アブへの正しい応急処置と予防法に、毒を吸い出す道具はポイズンリムーバーおすすめ3選|子連れ登山の必需品にまとめています。
予防の基本は、肌の露出を減らすこと、黒い服を避けること、そして虫よけを衣類の上からもかけて、時間がたったら塗り直すことです。子ども向けの選び方は登山用虫除けスプレーおすすめ5選|ディート濃度と子ども向け製品の選び方が参考になります。危ない虫がいると聞くと不安になりますが、見分け方と避け方を知っておけば、必要以上に怖がることはありません。
山の虫と触れ合う3つのルール|見て・調べて・逃がす
山の虫と気持ちよく触れ合うために、親子で守りたいルールが3つあります。
- 見る・写す:危険な虫や動きの速い虫は、無理に触らず、目と写真で観察する
- 調べる:見つけた虫の名前や場所を記録して、あとで図鑑で調べる
- 逃がす・持ち帰らない:観察が終わったら、見つけた場所に逃がす
観察したことを記録に残すと、それだけで立派な学びになります。虫だけでなく山のさまざまな観察テーマは夏休みの自由研究は登山で|親子でできる山の観察テーマ7つと記録のコツにまとめているので、記録のしかたの参考にしてください。
持ち帰りには注意が必要です。国立公園の特別保護地区では、すべての生き物を捕まえることが法律(自然公園法)で禁止されています。場所によっては地域のルールや条例で採集が禁じられていることもあるため、基本は「見たら逃がす」と考えておくと安心です。持ち帰ってはいけないと言うと子どもはがっかりするかもしれませんが、写真や記録に残せば、思い出はずっと持って帰れます。
まとめ|山の虫との出会いは親子の宝物
山の夏は、里では会えない虫との出会いにあふれています。会える虫と、触ってはいけない虫を知っておけば、観察はもっと安心で楽しいものになります。
- セミは鳴き声と抜け殻で種類がわかり、抜け殻集めは自由研究にもなる
- カブトムシ・クワガタは樹液の出る木を下見して、早朝や夜にねらう
- チョウ・トンボ・バッタは登山道を歩きながら観察できる
- スズメバチ・毛虫・アブ・マダニには近づかない・触らない
- 見て・調べて・逃がすの3つを守り、基本は持ち帰らない
虫の名前を一つ覚えるたびに、子どもの世界は少しずつ広がっていきます。次の山では、ぜひ足元や木の幹をのぞいてみてください。小さな発見が、親子の忘れられない思い出になります。


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