雨の中の登山を終えて家に帰ると、こんな不安がよぎりませんか。
- 濡れた登山靴を放っておいたら、カビや嫌な臭いが出ないか心配
- 正しい乾かし方がわからず、自己流でいいのか不安
- 防水スプレーを、いつ・どうかければいいのか迷っている
登山靴は安い買い物ではありません。雨で濡れたあとの手入れを間違えると、買ったばかりの一足でも早く傷んでしまいます。
この記事では、雨で濡れた登山靴を帰宅後どう手入れすれば長持ちするかを、つまずきやすい順番に沿ってまとめました。応急処置から乾かし方、防水ケアまで、登山靴メンテナンスの基本に沿って解説します。
読み終えるころには、雨の山行のあとに何を・どの順番ですればいいかがわかり、大切な登山靴を長く使えるようになります。
雨で濡れた登山靴を放置するとどうなる?

雨で濡れた登山靴を、玄関にそのまま置きっぱなしにするのはおすすめできません。濡れた状態を放っておくと、登山靴は驚くほど早く傷んでしまうからです。
まず気をつけたいのが、カビと臭いです。歩いているあいだに靴の内部にこもった湿気は、ソール(靴底)やインソール(中敷き)からは簡単に抜けません。湿ったまま放置すると、この水分がカビと雑菌のすみかになり、嫌な臭いの原因になります。
もうひとつ見落としがちなのが、ソールの劣化です。登山靴の靴底に多く使われるポリウレタンという素材は、高い湿度のなかに長く置かれると加水分解(水分で分解が進む現象)を起こし、もろくなりやすいのです。そのまま放置すると、せっかくのグリップ力が落ちるだけでなく、靴底がはがれる原因にもなります。
こうしたダメージは、乾燥と撥水(水をはじく処理)をきちんと行うことで大きく減らせます。逆に言えば、帰宅後のひと手間をかけるかどうかが、登山靴の寿命の分かれ道。なお、靴底の溝(ブロック)がすり減ってグリップが落ちてきたら、それは買い替えのサインです。靴選びの基準は、後ほど関連記事でも紹介します。とはいえ、雨のあとのケア自体は難しくありません。次の章から、帰宅後にやることを順番に見ていきましょう。
帰宅後すぐにやる3つの応急処置

家に着いたら、乾かす前にやっておきたい下準備が3つあります。どれも数分でできることばかりですが、ここを飛ばすと乾きが悪くなったり、傷みが進んだりします。山から帰って疲れていても、この3つだけは数分で終わるので、座り込む前にさっと済ませておくのがおすすめです。
1. 表面の泥や土砂を落とす
登山靴に土砂が付いたまま放っておくと、本来の防水性が失われていきます。まずは表面の泥や砂を落としましょう。乾いてからのほうが払い落としやすい泥もあるので、ひどい汚れは無理にこすらず、後の乾燥工程と合わせて落としても大丈夫です。
2. インソールと靴紐を外す
中敷きと靴紐は外して、靴本体とは別に乾かします。入れたままだと内部に湿気がこもり、乾きが遅くなってカビや臭いの原因になります。外した中敷きも、風通しのよい場所で立てかけて乾かしましょう。
3. タオルで水分を拭き取る
乾いたタオルを内側と外側から強く押し当て、水分を搾り出すように拭き取ります。ここでしっかり水気を取っておくと、このあとの乾燥がぐっと早くなります。内部の奥までタオルを差し込んで、こもった水分を吸い取るのがコツです。
登山靴の正しい乾かし方

下準備が終わったら、いよいよ乾燥です。ここでの「やってはいけないこと」を避けるだけで、登山靴はぐっと長持ちします。
基本は、直射日光を避けた風通しのよい日陰に平置きして、2〜3日かけてゆっくり乾かすことです。すぐに乾かしたい気持ちはわかりますが、急がば回れです。
やってはいけないのが、急激に乾かすことです。ストーブやドライヤーの熱風、直射日光に当てて一気に乾かすと、皮革のひび割れや、ソールのはがれを招きます。熱は登山靴にとって大敵だと覚えておきましょう。
乾燥を早めたいときは、靴の中に新聞紙を詰める方法が手軽です。新聞紙が内部の水分を吸い取ってくれるので、湿ってきたらこまめに取り替えましょう。さらに、靴用の乾燥剤を中に入れておけば、奥にこもった湿気も効率よく抜けます。外した中敷きは、立てて挿しておくと湿気が抜けやすくなります。2〜3日も待てないと感じるかもしれませんが、熱で急がずに新聞紙と乾燥剤でこまめに湿気を抜くのが、遠回りなようでいちばんの近道です。
湿気をしっかり抜くために、繰り返し使える靴用の乾燥剤がひとつあると便利です。雨の日だけでなく、汗をかいた夏の山行のあとにも活躍します。
カビと臭いを防ぐ保管のコツ

しっかり乾かせたら、次は保管です。せっかく乾かしても、しまい方を間違えるとカビや臭いがぶり返してしまいます。
大切なのは、風通しがよく、湿度が高くならない場所に、直射日光を避けてしまうことです。やってしまいがちなのが、買ったときの箱やビニール袋に入れたり、車内に置きっぱなしにしたり、閉め切った下駄箱の奥にしまったりすることです。これらはどれも湿気がこもりやすく、カビの温床になります。
臭い対策には、抗菌消臭スプレーが役立ちます。臭いが出てから慌てて使うのではなく、においが出る前の予防として、乾燥後にひと吹きしておくのがおすすめです。子どもの登山靴は特に汗で蒸れやすいので、家族の分もまとめてケアしておくと、玄関の臭いも気になりにくくなります。
防水スプレーの正しい使い方

登山靴の防水性は、使っているうちに少しずつ落ちていきます。雨の山行のあとは、撥水(水をはじく力)を回復させる絶好のタイミングです。ただし、順番と使い方を間違えると効果が出ないので注意しましょう。スプレーと聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、順番さえ守れば手順はシンプルです。
汚れを落としてから、しっかり乾かす
大前提として、汚れが付いたままでは防水スプレーをかけても効果がありません。表面に泥やほこりが残っていると、スプレーの成分が革や生地にきちんとなじまないからです。まず汚れを落とし、自然乾燥がすっかり終わってから撥水処理に進みます。「汚れ落とし、乾燥、撥水」の順番を守りましょう。
30cm離して、屋外で吹きかける
防水スプレーは、登山靴から30cmほど離して吹きかけます。スプレーの霧を吸い込まないよう、必ず屋外で、風下に人がいないことを確認してから行いましょう。また、革用・布用など素材に合ったスプレーを選ぶことも大切です。素材に合わないものを使うと、シミになったり効果が出なかったりします。
馬毛ブラシで成分をなじませる
吹きかけてよく乾かしたあと、馬毛ブラシで全体をブラッシングすると、スプレーの成分が均一に伸び、余分なぶんも取り除けます。ムラなく仕上がるので、撥水効果が長持ちします。馬毛ブラシは1本あると、日ごろの汚れ落としにも使えて便利です。
素材に合わせてケア用品を選ぶ
登山靴の素材によって、向いているケア用品は変わります。革(レザー)が多い登山靴なら、保革成分の入ったクリームと撥水スプレーの組み合わせが好相性。布と革を組み合わせたタイプや、化繊(ナイロンなどの合成素材)が中心の登山靴なら、一般的な撥水スプレーや撥水剤で手入れできます。自分の登山靴がどのタイプか、まず確認してから選びましょう。
布と革を組み合わせた登山靴や化繊の登山靴には、洗いながら撥水力を戻せるタイプの撥水剤も使いやすい選択肢です。スプレータイプの定番とあわせて、自分の登山靴に合うものを選んでください。
雨の日の登山靴ケアに使えるアイテムまとめ
ここまで紹介した、雨の日の登山靴ケアに役立つアイテムをまとめます。すべてをいちどに揃える必要はありません。まずは乾燥剤と撥水スプレーから始めて、必要に応じて買い足していくのがおすすめです。
- 靴用乾燥剤:靴の中に入れて湿気を抜く。カビ・臭い予防の土台
- 抗菌消臭スプレー:においが出る前の予防に。乾燥後にひと吹き
- 撥水スプレー:落ちた撥水力を回復。汚れ落とし・乾燥のあとに
- 撥水剤(塗り込みタイプ):布革・化繊の登山靴に。ムラなく仕上げたい方へ
梅雨入り前や夏山シーズンの前にまとめて準備しておくと、雨の山行から帰った日も慌てずに手入れができます。
まとめ:帰宅後のひと手間で登山靴は長持ちする
雨で濡れた登山靴のケアは、難しいことをする必要はありません。大切なのは、帰宅後のひと手間を、正しい順番で行うことです。
- 泥を落とし、中敷きと靴紐を外し、タオルで水分を拭き取る
- 直射日光を避けた日陰で、2〜3日かけてゆっくり乾かす
- ストーブやドライヤーの熱風で急激に乾かさない
- 風通しのよい場所に保管し、箱・ビニール袋・車内・下駄箱の奥は避ける
- 汚れを落として乾かしてから、素材に合った防水スプレーで撥水処理
この流れを習慣にすれば、お気に入りの登山靴を何年も気持ちよく履き続けられます。次の山行が雨予報のときは、体を濡らさない雨具の準備もあわせて確認しておくと安心です。レインウェアの選び方や、登山靴そのものの選び方は、次の記事で詳しく紹介しています。


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