【登山用語】なぜ日本語、英語、ドイツ語が混ざっているのか?

日本語・英語・ドイツ語が混ざる登山用語をイメージした稜線のイラスト 登山コラム

登山をしていると、当たり前のように使っている言葉があります。
「今日は稜線を歩いて、途中でデポして、最後はアタックしよう」
冷静に聞くと少し不思議な会話です。
日本語とカタカナが混ざり、しかもそのカタカナも英語だったりドイツ語だったりします。
しかし山では誰もその違和感を気にしません。
通じるから使う。それだけです。
登山用語がごちゃ混ぜに感じるのは日本の登山文化が長い時間をかけて、
さまざまな国の影響を受けながら形づくられてきたからです。
その歴史は今も言葉として山の中に残っています。

登山を始めたばかりの頃は、こうした言葉の多さに戸惑うこともあります。
用語以前に知っておきたい基本的な考え方やルールについては、こちらの記事でまとめています。
▶︎【登山のルールとマナー】知るべき不文律と暗黙の了解

日本語の登山用語は昔からの山文化

日本語の登山用語は昔からの山文化の中で生まれてきました。
稜線、縦走、沢、峠、山小屋。
こうした言葉は昔から日本の山に存在していました。
日本では山は単なるレジャーの場ではありませんでした。
信仰の対象であり生活の一部で、修行の場でもありました。
人が山と関わる中で自然と日本語の言葉が生まれ、定着していったのです。
「稜線」という言葉一つ取っても、ただの尾根ではありません。
山の背骨のようなイメージが自然に浮かびます。
こうした日本語は感覚的に理解しやすく、今もそのまま使われています。

日本語でよく使われる登山用語

用語
稜線
縦走
山小屋

ドイツ語は近代登山の名残

一方で明らかに日本語ではない言葉も多くあります。
ザック、アイゼン、ピッケル、シュラフ、ザイル。
これらはすべてドイツ語由来です。
日本の近代登山はヨーロッパのアルピニズムから大きな影響を受けました。
特に明治以降、登山技術や山岳学はドイツ語圏から多く導入されています。
当時、登山は学術的な対象でもありました。
そのため技術用語は無理に翻訳されず、そのまま使われることが多かったのです。
結果として装備に関する言葉が、今もドイツ語のまま残っています。
普段はあまり意識しませんがザックやアイゼンという言葉を使うたびに、
日本の登山が学問として輸入された歴史が顔を出しています。

ドイツ語由来でよく使われる登山用語

用語
ザック
アイゼン
ピッケル
シュラフ
ザイル

ザックやアイゼンといった装備は、言葉の由来を知ると選び方の視点も少し変わります。
初心者向けに装備の基本を整理した記事はこちらです。
▶︎ 登山用品・ギアを分かりやすく解説

英語は戦後のアウトドア文化と一緒に入ってきた

アタック、デポ、トレッキングポール、クランポン、エスケープルート。
これらは英語由来の登山用語です。
戦後、登山は次第にレジャーとして広がっていきました。
装備が進化しアウトドア文化が一般化する中で、
英語の言葉がそのまま使われるようになったのです。
登山用具メーカーや雑誌、海外の登山スタイルの影響も大きくありました。
新しい概念や道具に日本語を当てはめるより、カタカナ英語のほうが早く伝わりました。
その結果、英語由来の言葉が一気に増えていきました。

英語由来でよく使われる登山用語

用語
アタック
デポ
トレッキングポール
クランポン
エスケープルート

日本での呼び方が2つある登山用語

登山用語をややこしく感じさせる理由の一つが、
同じものを指しているのに呼び方が複数あることです。
これは違う時代に違う言語で入ってきた言葉がそのまま残った結果です。

呼び方が2つある登山用語

日本語での呼び方英語ドイツ語
アイゼンが多いクランポンアイゼン
リュックバックパックザック
寝袋スリーピングバッグシュラフ
ロープが多いロープザイル
エスケープルートエスケープルート

どの言葉を使っても意味は通じます。
山では正確な名称よりも「同じものを想像できること」が大切だからです。

なぜ日本語に統一されなかったのか

「途中で日本語に統一すればよかったのでは」と思うかもしれません。
しかし登山の世界では言葉はとても実用的です。
『安全に行動できること』『仲間と意思疎通ができること』
それが最優先でした。
そのため既に通じている言葉を、無理に言い換える必要がありませんでした。
登山用語は誰かが決めたルールではなく、現場で生き残った言葉なのです。

まとめ

登山用語が日本語、英語、ドイツ語で混ざっているのは、整理されなかったからではありません。
日本の登山が文化や学問そしてレジャーとして歩んできた歴史が、そのまま言葉に残っているのです。
次に山を歩くとき、何気なく使っている言葉を少しだけ意識してみてください。
いつもの登山が少しだけ奥行きのあるものに感じられるかもしれません。

山の言葉や文化について、他にもいくつかコラムを書いています。
▶︎ 登山コラム一覧はこちら

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